政策大綱

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日本新党には「綱領」は存在しなかったが、それに近いものとしては、結党時の「基本理念」や後に発表された「政策大綱」「政策要綱」があった 「日本政党史辞典」には各党の綱領またはそれに準ずる文書が掲載されているが、日本新党の場合はそれが「政策大綱」となっているため、ここでは「政策大綱」を掲載した
★政策大綱 1.政治の抜本的変革  東西冷戦を背景に形成された「保革対立」の戦後政治体制は、冷戦の終結とともにその歴史上の役割を終えた。 国民は冷戦後の内政外交の、新しい理念と政策プログラムを強く求めている。今、日本の政治に求められているのは、すでに役割を終えて機能不全に陥っている既成政党ならびに対立と野合の戦後政治体制を解体し、これに代わる、新しい政治体制を構築することである。  日本新党は、旧戦後体制の打破と冷戦以後の新体制の創造に向けて、主導的役割を果たすために立ち上がった。  我々が目指すのは、国内ばかりでなく地球のすみずみにまで思いやりを持ち、理想をかかげて行動する「品格ある国家」である。  我々は、冷戦の遺物であるイデオロギー対立の固定観念を拒否する。  我々は冷戦以後の新しい時代において、  (1)保護統制・生産者の既得権擁護型から生活者の主権を大切にする開放・自由選択型へ  (2)中央集権・官僚主導型から地方分権・住民参加型へ、 と政策の基本路線を転換する。  政治手法も、抜本的に変革したい。即ち、  (1)イデオロギー対立型から政策論争型へ  (2)利益誘導型から理念提示型へ  (3)派閥支配・組織重視型から法治優先・ネットワーク重視型へ と転換する。 2.新世界秩序の形成  冷戦の終結、社会主義体制の崩壊、世界市場経済の形成、地球環境保全、南北格差拡大などの諸問題は、近代産業社会を支配してきた資源・エネルギー多消費型文明や覇権主義的国際秩序の根本的な見直しを人類社会に迫っている。 「変化」と「改革・開放」は、いまや国境を越えて、全世界諸国民の共通の合言葉となっている。  日本新党は、これまでの国際政治の固定観念を打破し、国連中心の新しい平和秩序の形成に向けて、能動・積極・外向の姿勢で国際社会に貢献するための、新たな努力を開始する。  各国主権を離れた形での国連警察隊(仮称)の創設に積極的に参画するとともに、アジア・太平洋地域の新たな安全保障の枠組み作りのためにイニシアチブを発揮する。  経済・科学技術と交通・通信手段の発達の結果、諸国民が平和と自由のなかに共存共栄していくために、経済社会の相互依存関係と文化の多様性、独自性をはっきりと承認し、「競争」と「共生」の均衡のとれた国際ルールを、普遍的なものとして受け入れる新しい国際協調主義の理念形成を図る。  冷戦終結後の世界と日本の秩序を再構築していくためには、旧思考の壁や旧制度の障壁を打破していくための強い政治的リーダーシップと、地球的視野に立つグローバリズムの理念が必要である。  我々は、このような地球規模の課題を国内政治に直結させていくというグローバリズムの理念に立って、「世界のなかの日本」の役割と責任を考える国民政党を目指す。 3.新しい改憲論の提唱  冷戦以後の新世界秩序形成への参画にあたり、日本新党は日本が戦前の軍国主義時代において犯した過去の戦争を深く反省し、その歴史の教訓を決して忘れない。 我々はまた、冷戦以後の新世界秩序形成に参画するにあたり、現行憲法の(1)国民主権、(2)平和主義、(3)基本的人権、などの基本原則を堅持する。 その上で、これらの基本原則が冷戦以後の新しい国際環境のなかでよりよく発揮できるようにするための憲法改正に、慎重に、しかし積極的に取り組む。  憲法解釈上の重要な対立点を曖昧にし、憲法論争をタブーにしたままでは、国民が求める新しい国家理念を樹立することは不可能であり、またそうした唆味な態度が政党政治を堕落させてきたからである。 我々の改憲論は、現行憲法の平和主義などの原則を護持する立場から提起するものであり、この点で、国威の発揚を志向し戦前の日本に回帰することを目指すかのように受け止められている従来の改憲論とは全く異なる、新しい改憲論である。  憲法改正が必要だと考えられる条項のなかには、国連平和維持活動への積極的参加の明文化、国際協調の精神の強調、立法府の主体性確立と内閣のリーダーシップ強化を目指した立法府と行政府との関係の明確化、衆参両院の役割分担の明確化、憲法改正以外の事項にも国民投票を拡大することなどが含まれる。 4.六つの基本目標 (1)立法府の強化と政治・行政改革の断行  国民主権の憲法上の規定に従って、立法府の本来の機能を回復しなければならない。 そのためには、国会の政策立案機能を強化することなどによって、国会運営を議員相互の質疑、論争、審議、提案を中心としたものへと転換する。  立法府の政策立案機能の強化と並行して、現在の議院内閣制の在り方を再検討し、首相公選制度を含め、内閣が強力なリーダーシップを発揮できるような制度改革を推進する。  政治改革は、同時に行政の改革でなければならない。 特に、政治腐敗を根絶し、官僚システムに政治が従属する状況を脱却するため、行政情報の公開制度を導入して政治・行政をガラス張りにする。 (2)生活者主権の確立  これまでの生産者優先の経済・社会システムは、戦後の荒廃から今日の繁栄をもたらしたが、経済的には大国となった今、そのシステムを生活者優先に転換しなければならない。  その第一に、古くなった数々の規制を緩和する。 そして、これまでの経済成長至上主義の生産者保護システムを、市場メカニズムが働くような経済構造に、政府・企業・個人が力を合わせて変えていく。  第二に、高齢者と青年層を重視する。 特に、現在の高齢者は、今日の繁栄を導いてきた人たちであることから、その豊かな知識と経験を次の世代に引き継ぐことができるような、また心身の健康を保ちながら積極的に社会参加出来るような、さらに、介護が必要な時はいつでもそのサービスが受けられるような社会システムを創る。  また、日本の未来を開く青少年が個性豊かに各々の人生設計を描き、それに向かって努力すれば、必ず報われると信じることが出来る社会を構築する。  第三に、工場やオフィス環境の充実が重視されるのに反して、後まわしにされてきた住環境を整備する。 このため、大都市圏においては、土地に対する私権乱用を抑えて、立体化・空閑地活用を図る。  第四に、家庭生活を重視する。 生産の場にしばりつけられがちだったサラリーマンが家庭団らん時間を多くもてるようにするためにも、労働時間を短縮する。 (3)地方分権の徹底と行財政改革の推進  地方の住民が自分たちの問題を自分たちで解決する権利と義務を持ち合わせていることを自覚することによって、地方ごとに多様な生活や文化の基盤を充実させ、「自由な選択」と「豊かな生活」を実感できるようにする。  補助金システムなどを通じた中央政府の地方に対するコントロールを廃し、地方の特色や生活のニーズに即した公的サービスの充実に、地方自らの力で取り組んでいけるようにする。 このため「地方主権」の確立を目指して、「基本法」を制定するとともに、地方主権の裏付けのために抜本的財源転換を図る。  国の行政については、追いつき型近代化の過程で、過度に集権化し、肥大化してしまった行政機能を真に国が行うべき部分に集約し、小さな、効率のよい政府を目指す。 特に農業について、食糧生産に対する価格支持制度、生産制限などの過剰介入を排する。  一方、土地問題については、むしろ、政府の強力な介入が必要である。 用途規制や大都市周辺の農地など遊休地に対する課税を強化し、住宅などの供給を増やす。 (4)二十一世紀のための教育改革  日本新党は、硬直化し、単線化した明治以来の教育制度や戦後の6・3・3・4制の学制における画一、詰め込み、没個性の教育を、個性化、多様化、国際化していくため教育制度、カリキュラムを含めた抜本的な教育改革に取り組む。 教育委員会の機能を再編強化し、教育の地方分権を推進する。 教育の多様化を強力に推進するため、まず中等教育に関する過度の国家統制をやめ、学校選択の自由を拡大する。 また、教科書検定制度に関しては、高等学校を手始めに廃止の方向をとり、質の高い、多様な教科書が供給されるような制度を導入する。  国際社会に通用する質の高い教育を実現するため、カりキュラム編成、学部学科編成、学校設置基準、教員資格、収容定員などの面に見られる過剰規制を撤廃する。  また教育機関に対する公的助成が、画一的、懇意的な統制、介入につながらないように留意するとともに、地方自治体の創意工夫が活かされるようにする。 これにより、各地方ごとの教育機関相互の競争を促進する。私学助成の在り方を再検討するとともに、教育・研究のために必要な公的資金の投入は、ナショナル・プロジェクトとして大幅に拡充する。  国際文化交流をより一層促進するため、教育・文化諸施設を積極的に対外開放する。 とくに大学院の飛躍的充実を図ることとし、客員教授ポスト増設などの特別措置を講ずる。 (5)世界平和への貢献と世界経済との協調  戦争放棄を全世界共通の理念とすべく平和憲法の理想を高く掲げ、今世紀末を目途とする核兵器・生物兵器・化学兵器の全廃と全面軍縮を目指して、積極的イニシアチブを発揮する。 国連を中心とした世界の新しい平和秩序が指向される中、我が国も、自らの得意とする分野を活かして世界の自由と平和に積極的に寄与することができるよう、国内法体系ならびに諸機関を整備する。 日米欧三極の安全保障と政治経済の協調体制を堅持しながら、アジア・太平洋地域の経済協力を発展させ、世界の平和維持と地域紛争処理のための国連活動に積極的に貢献する。  真の平和国家となるため、利己主義的な実利の獲得にいそしむのではなく、地域全体の自由と人権、平和と豊かさの改善に貢献し、自由と豊かさを世界のすべての人々と共有することを目指す。  世界経済の相互依存関係の深まりと世界経済のボーダーレス化の進展のなかで、従来のような日本の閉鎖的システムは最早許容されない。 資源の少ない海洋国家である我が国が、多角的な自由貿易によって支えられていることを充分に認識し、米欧の先進工業諸国と緊密に協力しながら、開放経済へのイニシアチブを積極的に発揮していく。  経済政策の運営にあたっては、世界全体の景気・雇用・物価に対する目配りを怠らないようにし、G7などの国際経済政策調整の場を活用しながら、機動的な経済運営を展開する。 (6)地球環境問題への挑戦  地球環境保全の問題に対処するため、政府・民間あわせて国内・国外での環境保全費として、GNP2%を目標値として設定し、その実現を目指す。  地球環境保全の最重要な戦略課題が、生命の源泉である緑と水の防衛にあるという基本認識に立ち、砂漠の緑化、植林計画の推進、自然林の保全、緑の田園都市計画、生態系の保護などの「地球緑化プロジェクト」に、日本の持つ人材、技術、資金を最優先して投入する。 また、日本の自然を守り、緑を増やし、美しい海岸線をつくるための施策を積極的に推進する。  日本の公害防止、省エネルギー・省資源技術を世界に積極的に広め、エネルギー多消費型文明の根本的見直しを行い、世界各国が経済発展と環境保全とを両立できるように支援する。 また、残された最大のフロンティアである海洋の開発と、太陽エネルギーなどの代替エネルギーの開発・実用化に積極的に取り組む。  大気汚染防止、水質保全、地球温暖化対策など、地球環境問題に関わる経済協力は、特に、教育・学術・技術面での援助・協力・共同プロジェクトの推進などを重視する。 地球環境保全につながる国際的な大規模公共事業や宇宙・海洋開発などについても、積極的に人的・財政的に貢献する。
*「日本政党史辞典」による この本には各党の綱領またはそれに準ずる文書が掲載されているが、日本新党の場合はそれが「政策大綱」となっているため、ここでは「政策大綱」を掲載した。 「新党全記録」には政策大綱の発表の記録はあるが、「政策大綱」と題する文書は掲載されていていない。しかし同書収録の「政策理念と基本課題」の「はじめに」の部分が、日本政党史辞典収録の「政策大綱」とほぼ同じ内容になっている(一部の文章が異なる)。 上に掲載した「政策大綱」で「(仮称)」とある部分が「新党全記録」収録の「政策理念と基本課題」では無くなっているなど、上記の文書はより古い形のように見受けられる。 この点では「新党全記録」の「政策理念と基本課題」を正式なものとして載せるべきかもしれないが、この本は全体的に誤りが多く、どこまで信用していいのか判断しかねるため、ここでは「日本政党史辞典」の「政策大綱」を掲載した。